民法 条文 | 民法 解説 | ||||||||||||
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第3編 債権 第1章 総則 第3節 多数当事者の債権及び債務 |
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第1款 総則 第427条 【分割債権及び分割債務】 数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。 |
債権者が数人いるときは、各債権者が平等の割合で債権をもつ。債務者の場合も同様である。これを頭割りの原則という。 ただし、当事者の間で特別の約束がある場合は別である。 |
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第2款 不可分債務 第428条 【不可分債権】 債権の目的がその性質上又は当事者の意思表示によって不可分である場合において、数人の債権者があるときは、各債権者はすべての債権者のために履行を請求し、債務者はすべての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。 |
不可分債権とは、3人が共同して1台の車を買い受けたような場合のことである。 債権の性質上や当事者の頭割りにしないという特約がある債権においては、一人の債権者が履行の請求をすると全員が請求したことになり、全員のために請求を理由とする履行遅滞や時効の中断が生じる。 また、一人の債務者が弁済すると、全債務者が債務を免れることになる。 |
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第429条 【不可分債権者の一人について生じた事由等の効力】 ? 不可分債権者の一人と債務者との間に更改又は免除があった場合においても、他の不可分債権者は、債務の全部の履行を請求することができる。この場合においては、その一人の不可分債権者がその権利を失わなければ分与される利益を債務者に償還しなければならない。 ? 前項に規定する場合のほか、不可分債権者の一人の行為又は一人について生じた事由は、他の不可分債権者に対してその効力を生じない。 |
? 不可分債権者の一人と債務者との間で契約の変更があったときでも、他の債権者は本来の債務を履行するよう債務者に要求できる。この結果として、債権者が受け取りすぎたときは、その分だけ債務者に返還しなければならない。これは、免除についても同様である。 ? 変更や免除の他にも、不可分債権者の一人と債務者との間で生じた事由は、?と同様である。 例えば、ABCDEの5人がFに対して100万円の車を引き渡せという債権を持っていたとして、AがFに対して債務を免除した場合、残りのBCDEはFに対して車を引き渡せと要求できるが、引き渡しがあったときは、20万円をFに返還しなければならない。もし第429条がなかったとしたら、BCDEがAに20万円を返還し、AがFに20万円を返還するというプロセスを踏まなければならないことになる。 |
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第430条 【不可分債務】 前条の規定及び次款(連帯債務)の規定(第434条から第440条までの規定を除く。)は、数人が不可分債務を負担する場合について準用する。 |
不可分債務とは、複数の債務者がいて債務が頭割りできないような債務のことである。 不可分債務は第429条(不可分債権)と次款の規定を準用する。ただし、第434条から第440条までは除外する。 例えば、AがBCDEFから100万円の車を買ったとして、AがBの債務を免除した場合、AはCDEFに同時にまたは順番にその車を引き渡せと要求できるが、引き渡しがあったときは、20万円をBに返還しなければならない。また、その要求に応じたCは、他の債務者に対してそれぞれの債務の負担割合に応じて分担を要求できる。また、Cが債務を履行したとか、履行しに行ったがAが受領しなかった場合、その他の債務者も履行したこと、履行の提供をしたこと、受領遅滞が生じたことを主張できる。 |
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第431条 【可分債権または可分債務への変更】 不可分債権が可分債権となったときは、各債権者は自己が権利を有する部分についてのみ履行を請求することができ、不可分債務が可分債務となったときは、各債務者はその負担部分についてのみ履行の責任を負う。 |
例えば、ABがCDから100万円の車を買う契約をしたとして、その車が何らかの理由で引き渡せなくなった場合、CDの車を引き渡すという債務は、損害賠償債務にかわることになる。この結果、ABは各々が50万円だけ支払いを要求でき、CDは各々50万円だけ負担すればよいことになる。 | ||||||||||||
第3款 連帯債務 第432条 【履行の請求】 数人が連帯債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次にすべての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。 |
連帯債務とは、数人の債務者が同一内容の給付について、各自が独立に全部の給付を成すべき債務を負担し、そのうちの1人の給付があれば他の債務者も債務を免れる関係のことである。一方、債権者は債務者の1人または全員に対して、同時または順次に、全部または一部の請求をすることができる。 民法では債権者は債務者に対して次のようなことができるとしている。 1、一人に債権の全部を請求すること 2、一人に債権の一部を請求すること 3、全員に同時に債権の全部を請求すること 4、全員に同時に債権の一部を請求すること 5、全員に順次に債権の全部を請求すること 6、全員に順次に債権の一部を請求すること 例えば、ABがCから100万円の借金をすると、普通の場合はAとBが50万ずつ借金したことになる。だが連帯債務だと、Aが100万円、Bが100万の借金をしたことになり、債権者のCは、AとBの二人に同時に100万円の支払いを要求できる。 このように連帯債務の場合は債権者の立場は非常に強いことになる。 また連帯債務はそれぞれ独立した債務なので、条件や期限がことなっていても構わない。 |
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第433条 【連帯債務者の一人についての法律行為の無効等】 連帯債務者の一人について法律行為の無効又は取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務は、その効力を妨げられない。 |
連帯債務者の一人に、契約の無効原因があっても、その他の連帯債務者が負担している債務は有効である。詐欺など契約の取り消し原因があっても同様に有効である。 | ||||||||||||
第434条 【連帯債務者の一人に対する履行の請求】 連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても、その効力を生ずる。 |
債権者Aが、連帯債務者BCのうち、Bだけに履行の請求をした場合、Cにも履行の請求をしたことになる。 履行の請求の結果として次のようなことが生じる。 1、時効の中断 2、解除権の発生 3、履行遅滞 |
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第435条 【連帯債務者の一人との間の更改】 連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅する。 |
債権者が連帯債務者の一人と契約を変更した場合、変更前の連帯債務は消滅する。 例えば、債権者AがBCDEに連帯債務として100万円を貸したとする。そして、AとBとの間で100万円相当の車を引き渡すという契約に変更した場合、CDEはAにお金を返す必要は無くなる。BがAに車を引き渡した場合、BはCDEからそれぞれ25万円を弁償してもらえる。 |
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第436条 【連帯債務者の一人による相殺等】 ? 連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅する。 ? 前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分についてのみ他の連帯債務者が相殺を援用することができる。 |
? 連帯債務者の一人が、債権者に対して反対債権をもっており、その反対債権と連帯債務とを相殺したときは、相殺された額の連帯債務は完全に消滅する。 例えば、債権者AがBCDEに連帯債務として100万円を貸しているが、BはAに50万円の貸しがあるとする。もし、Bが相殺をすると、残りの50万円を支払えばよいことになる。 ? 連帯債務者の一人が、債権者に対して反対債権を持っており、その債務者が相殺をしないうちに、債権者が他の債務者に対して債務の履行を要求したら、他の債務者は反対債権の負担額内で相殺をしてもかまわない。 例えば、?の例で、Bが相殺する前に、CがAから履行の請求をされた場合、CはBの負担部分の25万円の反対債権で相殺をしても良い。そして、Cは残額の75万円を支払えばよい。 |
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第437条 【連帯債務者の一人に対する免除】 連帯債務者の一人に対してした債務の免除は、その連帯債務者の負担部分についてのみ、他の連帯債務者の利益のためにも、その効力を生ずる。 |
連帯債務者の一人が、債権者から債務を免除された場合、免除された額だけ連帯債務は完全に消滅する。したがって、他の連帯債務者も免除された負担部分については支払う必要は無くなる。 この条は、第445条の連帯の免除と区別する必要がある。 例えば、AがBCに連帯債務として100万円を貸したとして、AがBの債務だけ免除したとする。そして、AがCに履行の請求をしたら、Cは50万円だけ返せばよい。 |
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第438条 【連帯債務者の一人との間の混同】 連帯債務者の一人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は、弁済をしたものとみなす。 |
債権者の地位と債務者の地位とが混同してしまったときは、債務を履行したのと同様になる。 混同については、第520条を参照。 |
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第439条 【連帯債務者の一人についての時効の完成】 連帯債務者の一人のために時効が完成したときは、その連帯債務者の負担部分については、他の連帯債務者も、その義務を免れる。 |
連帯債務者の一人の債務が時効にかかって債務を免れたときは、その債務者の負担額だけ債務は消滅する。したがって、その他の債務者は残りの債務を支払えばよいことになる。 時効については、請求だけは絶対的効力を及ぼすが、その他の差押え、仮差押え、仮処分、承認は相対的効力を生じるに止まる。 |
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第440条 【相対的効力の原則】 第434条からから前条までに規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。 |
連帯債務者に生じた第434条から第439条までの6つのことがらは、その他の連帯債務者にも効力を及ぼす。効力を及ぼすことを絶対的効力という。逆に、効力を及ぼさないことを相対的効力という。 絶対的効力 1、請求 2、更改 3、相殺 4、免除 5、混同 6、時効(請求だけ) |
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第441条 【連帯債務者についての破産手続の開始】 連帯債務者の全員又はそのうちの数人が破産手続開始の決定を受けたときは、債権者は、その債権の全額について各破産財団の配当に加入することができる。 |
連帯債務者の全員かそのうちの数人が破産した場合、債権全額についてそれぞれの破産債務者の破産財団に配当の申入れができる。つまり、連帯債務者が破産しても連帯債務の効力は存続する。 AがBCに連帯債務で100万円を貸して、BCが破産したとする。この場合、AはBとCそれぞれの破産財団に100万円ずつ配当加入できる。実際に支払ってもらえるのは100万円だけである。もしBの破産財団から50万円の支払いがあった場合、Cの破産財団への配当加入額を減額する必要は無い。しかし、Bの破産手続きが終了して50万円の配当を受けた後に、Cが破産したときは50万円の配当加入ができるにすぎない。 |
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第442条 【連帯債務者間の求償権】 ? 連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、他の連帯債務者に対し、各自の負担部分について求償権を有する。 ? 前項の規定による求償は、弁済その他免責があった日以後の法定利息及び避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する。 |
? 連帯債務者の一人が弁済したときは、その債務者は、他の債務者にそれぞれの負担割合に応じた額の返還を要求できる。これを求償権という。 代物弁済、供託、更改、相殺、混同などで、総債務者のために債務を消滅させたときも同様に求償権がある。 ? 求償は、?以外にも、債権者が債務を消滅させた日以後の法定利息や必要な経費やその他の損害の賠償も要求できる。 例えば、AがBCに連帯債務で100万円を貸したとする。そしてBが100万円全額を弁済したら、BはCに50万円の返還を要求できる。 負担部分については特別の約束が無い限り、平等である。特約で負担部分ゼロとすることもできる。上の例において、Bが100万円、Cがゼロとすることもできる。 |
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第443条 【通知を怠った連帯債務者の求償の制限】 ? 連帯債務者の一人が債権者から履行の請求を受けたことを他の連帯債務者に通知しないで弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た場合において、他の連帯債務者は、債権者に対抗することができる事由を有していたときは、その負担部分について、その事由をもってその免責を得た連帯債務者に対抗することができる。この場合において、相殺をもってその免責を得た連帯債務者に対抗したときは、過失のある連帯債務者は、債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。 ? 連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たことを他の連帯債務者に通知することを怠ったため、他の連帯債務者が善意で弁済をし、その他有償の行為をもって免責を得たときは、その免責を得た連帯債務者は、自己の弁済その他免責のためにした行為を有効であったものとみなすことができる。 |
? 連帯債務者の一人が債権者から履行の請求を受け、そのことを他の連帯債務者に知らせないまま支払った場合のことが書かれている。その他の債務者が債権者に対抗できる理由があれば、自分の負担額を支払った債務者に返還しなくてもよい。普通の支払いだけでなく、代物弁済、供託、更改、相殺、混同などの場合も同様である。また、他の連帯債務者が債権者に反対債権を持っており相殺を主張できるときは、通知をせず支払ってしまった債務者は、他の連帯債務者から返還してもらうことができず、債権者から相殺し得た額をかえしてもらえるだけである。 例えば、ABCが共同してDから90万円で石油を買い、Bがまだ自分の分を受け取らないうちに、Aが黙って石油の代金90万円を支払ったとする。AがBに負担額30万円の請求をしても、Bは石油を受け取るまで支払いを拒否できる。もし、Bはすでに石油を受けとっていたが、Dに対して30万円の債権をもっていた場合、AがBに負担額の請求をしても、Bはそれを拒否できる。この場合、AはBから返してもらえなかったかわりにDから30万円を返してもらえる。 ? 連帯債務者の一人が債権者に支払いをし、他の連帯債務者に知らせなかった間に、他の連帯債務者がその事を知らずに支払ったときは、自分の弁済のほうが有効であると主張することができる。弁済以外の理由で消滅させたときも同様である。 例えば、?の例で、Aが90万円を支払った後に、善意のBがさらに90万円をDに支払ったとする。この場合、BはAに対して自分の弁済のほうが有効であると主張できAから60万円を返還してもらえる。一方、DはAとBから二重に弁済を受け不当利得を得ているからその分だけAに返還する必要がある。 |
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第444条 【償還をする資力のない者の負担部分の負担】 連帯債務者の中に償還をする資力のない者があるときは、その償還をすることができない部分は、求償者及び他の資力のある者の間で、各自の負担部分に応じて分割して負担する。ただし、求償者に過失があるときは、他の連帯債務者に対して分担を請求することができない。 |
連帯債務者の中で返還を要求されても支払えない者がいるときは、その部分を他の財産のある者が、負担の割合に応じて分担しなければならない。ただし、返還を要求した者に過失があるときは、要求をすることができない。 例えば、ABCが連帯してDから90万円の物を買い、Aが90万円を支払ったとき、AはBCにそれぞれ30万円ずつ求償できるが、Bにその財産が無かったとする。この場合、Bの負担額30万円はAとCが負担することになり、AはCから45万円を返還してもらえる。ただし、AがBに求償しないでいる間にBの財産がなくなってしまったときは、Bの負担部分は全てAが負担しなければならず、AはCに30万円を求償できるだけである。 |
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第445条 【連帯の免除と弁済をする資力のない者の負担部分の負担】 連帯債務者の一人が連帯の免除を得た場合において、他の連帯債務者の中に弁済をする資力のない者があるときは、債権者は、その資力のない者が弁済をすることができない部分のうち連帯の免除を得た者が負担すべき部分を負担する。 |
この条は、第437条の連帯債務者の一人に対する免除と区別する必要がある。 例えば、債権者Aが300万円の連帯債務者BCDのうち、Bにだけ、「Bだけは連帯しなくてもよい」とするのが、連帯の免除である。連帯の免除によってBは100万円の債務を負うだけとなる。債権者Aは連帯の免除をしても、CとDに300万円ずつ要求することができる。もし、Cが300万円を弁済すれば、CはBDから100万円ずつ返還を要求できる。しかし、Dが無資力だった場合、本来であればBから150万円の返還を要求できるが、Bは連帯の免除を受けており100万円しか要求できず、差額の50万円は債権者Aから返還してもらうことになる。 |
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第4款 保証債務 第1目 総則 第446条 【保証人の責任等】 ? 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。 ? 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。 ? 保証契約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。 |
保証債務とは主たる債務者がその債務を履行しない場合に保証人の履行すべき債務のことである。主債務と同じ内容であるが、主債務とは別個であり、主債務より重いものではない。また、保証債務には附従性、随伴性、補充性がある。
例えば、AはBに1000万円を貸すにあたり、Bの資力に不安があったので、資産家のCに保証人になってもらった。このときのBを主たる債務者といい、Cを従たる債務者(保証人)という。 |
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第447条 【保証債務の範囲】 ? 保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。 ? 保証人は、その保証債務についてのみ、違約金又は損害賠償の額を約定することができる。 |
? 保証人は主債務者の負担している債務のほかに、利息、違約金、損害賠償およびその他主債務者に従たるものを保証しなくてはらない。 ? 保証人は保証債務についてだけ、主債務とは別に、違約金や損害賠償の額を約束することができる。 |
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第448条 【保証人の負担が主たる債務より重い場合】 保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。 |
保証債務は主たる債務に対して従たる債務である。保証債務が主たる債務よりもその目的、態様について主たる債務より重くなることはない。保証債務が主たる債務と同一かそれよりも軽い場合は有効であり、主たる債務よりも重い場合は主たる債務の限度まで減縮される。これを内容における附従性という。 例えば、主たる債務が無利息で、保証債務が利息付であれば、保証債務の利息付の部分は無利息になる。 |
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第449条 【取り消すことができる債務の保証】 行為能力の制限によって取り消すことができる債務を保証した者は、保証契約の時においてその取消しの原因を知っていたときは、主たる債務の不履行の場合又はその債務の取消しの場合においてこれと同一の目的を有する独立の債務を負担したものと推定する。 |
主債務者が下のような人であることを知って保証人となった場合について書かれている。 1、未成年者 2、成年被後見人 3、被保佐人 4、被補助人 もし主債務者が制限能力を理由に債権者との契約を取り消したとき、保証債務の附従性により本来であれば保証債務もなくなるはずであるが、本条で主債務が取り消された場合でも保証債務は消滅しないとされている。 例えば、未成年者AがBから借金するとき、Aが未成年者であることを知っているCがその債務を保証したとする。そして、Aが未成年を理由に取り消すと主債務は消滅する。だが、CはAが未成年を理由に取り消す可能性があることを知って債務を保証したのだから、取り消しによってBが受ける損害をカバーする意思であったとみなされ、Cの保証債務は消滅しない。 |
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第450条 【保証人の要件】 ? 債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、その保証人は、次に掲げる要件を具備する者でなければならない。 1 行為能力者であること 2 弁済をする資力を有すること
? 保証人が前項第2号に掲げる要件を欠くに至ったときは、債権者は、同項各号に掲げる要件を具備する者をもってこれに代えることを請求することができる。 ? 前2項の規定は、債権者が保証人を指名した場合には、適用しない。 |
? 債務者が保証人をたてる義務を負う場合は、保証人は能力者であることと弁済の資力があることを条件とする。 ? 債務者が保証人をたてた後で、その保証人が条件に合わなくなったら、債権者は条件にあてはまる別の人間を保証人に要求できる。 ? 債権者自身が保証人を指定したときは、?と?は適用しない。 つまり、債務者が保証人を準備するときは、能力者で弁済できる資力のある人を用意しなければならず、債権者が保証人を準備するときは特に制限が無いということである。 |
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第451条 【他の担保の供与】 債務者は、前条第1項各号に掲げる要件を具備する保証人を立てることができないときは、他の担保を供してこれに代えることができる。 |
債務者が第450条の条件を備えた保証人をたてられないときは、質や抵当などの担保を提供することで、保証人の代わりとすることができる。 | ||||||||||||
第452条 【催告の抗弁】 債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。 |
債権者が保証人に債務の履行を請求してきたとき、保証人は「まず主債務者から請求してください」といって拒絶することができる。これを催告の抗弁権という。ただし、主債務者が破産したときや行方不明のときはこの権利はなく、ただちに履行しなければならない。 そして、債権者が主債務者に催告すれば、催告の抗弁権は消滅し、二度と行使できない。 |
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第453条 【検索の抗弁】 債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。 |
債権者が第452条の規定により主債務者に催告した後でも、保証人が「主債務者には十分な財産があり、強制執行をかけることも容易である」と、証明したときは債権者はまず、主債務者の財産に強制執行をかけなければならない。これを検索の抗弁権という。 十分な財産とは、全額を弁済する資力までは必要とされていない。 |
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第454条 【連帯保証の場合の特則】 保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前2条の権利を有しない。 |
主債務者と連帯して債務を保証することを連帯保証という。この場合は、催告の抗弁権と検索の抗弁権は使うことができない。 連帯保証は特約に基づいて発生するが、商法上の保証は全部連帯保証である。 |
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第456条 【数人の保証人がある場合】 数人の保証人がある場合には、それらの保証人が各別の行為により債務を負担したときであっても、第427条の規定を適用する。 |
保証人が数人いるときは頭割りで保証債務を負担する。数人が一度に保証人となったときも、別々になったときも同様である。 債権者Aが主債務者Bに100万円を貸し、Cを保証人にたてると、Cは100万円の保証債務を負担することになる。次にDが保証人に加わると、CとDはそれぞれ50万の保証債務を負担することになる。 |
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第457条 【主たる債務者について生じた事由の効力】 ? 主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の中断は、保証人に対しても、その効力を生ずる。 ? 保証人は、主たる債務者の債権による相殺をもって債権者に対抗することができる。 |
? 債権者が主債務者に対して債務の履行を請求したり、主債務者が債務を承認したりして時効が中断したときは、保証債務の時効も中断する。 ? 主債務者が債権者に対して反対債権を持っている場合、保証人はこの反対債権を利用して相殺することができる。 |
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第458条 【連帯保証人について生じた事由の効力】 第434条から第440条までの規定は、主たる債務者が保証人と連帯して債務を負担する場合について準用する。 |
主債務者と保証人が連帯して債務を負担するときは、第434条から第440条までが適用される。つまり、連帯債務と同じ取り扱いになる。 条文からは第434条から第440条までの全てが適用されるように見えるが、保証には負担部分がないから、負担部分を前提とする条項は実際には適用されない。 |
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第459条 【委託を受けた保証人の求償権】 ? 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受け、又は主たる債務者に代わって弁済をし、その他自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対して求償権を有する。 ? 第442条第2項の規定は、前項の場合について準用する。 |
? 主債務者から頼まれて保証人になり、代わって弁済したときは、その分だけ主債務者から弁済してもらえる。保証人が、代物弁済、供託、更改、相殺、混同などの方法で債務を消滅させたときも同様である。また、保証人が過失が無いにもかかわらず、債権者に支払えと裁判所から言い渡されたときも、同様に主債務者から弁償してもらえるが、この場合は債権者に支払う前にあらかじめ弁償を要求することができる。 ? 保証人が主債務者に弁償を要求できる範囲は、連帯債務の第442条第2項の規定と同様である。つまり、弁済した額のほかに、法定利息や弁済費用や損害賠償額などが含まれる。 |
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第460条 【委託を受けた保証人の事前の求償権】 保証人は、主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、次に掲げるときは、主たる債務者に対して、あらかじめ、求償権を行使することができる。 1 主たる債務者が破産手続開始の決定を受け、かつ、債権者がその破産財団の配当に加入しないとき。 2 債務が弁済期にあるとき。ただし、保証契約の後に債権者が主たる債務者に許与した期限は、保証人に対抗することができない。 3 債務の弁済期が不確定で、かつ、その最長期をも確定することができない場合において、保証契約の後10年を経過したとき。 |
主債務者に頼まれてなった保証人は、次の1と2と3の場合にも主債務者にあらかじめ弁償を要求できる。 1、主債務者が破産の宣告を受け、しかも、債権者がその破産財団の配当に加入しなかったとき 2、債務の弁済期が到来したとき。ただし保証契約をした後で、債権者が弁済期の延期を主債務者に許しても、保証人はもとの弁済期が来た以上、弁償を要求できる。 3、債務の弁済期がはっきりせず、しかもその最も長い期日を確定することができないときは、保証人となってから10年以上経過したとき。 |
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第461条 【主たる債務者が保証人に対して償還をする場合】 ? 前2条の規定により主たる債務者が保証人に対して償還をする場合において、債権者が全部の弁済を受けない間は、主たる債務者は、保証人に担保を供させ、又は保証人に対して自己に免責を得させることを請求することができる。 ? 前項に規定する場合において、主たる債務者は、供託をし、担保を供し、又は保証人に免責を得させて、その償還の義務を免れることができる。 |
? 第459条と第460条の規定によって、主債務者は、保証人に対してあらかじめ賠償をなす際、または、賠償をした後に、まだ債権者に債務の全部を弁済していない間は、保証人に担保を差し出すよう要求することができるし、また保証人に賠償をする代わりに自分が債権者から弁済を要求されても支払う必要のないことを保証人に確認させることができる。 ? また?の場合において主債務者は、供託したり、担保を提供したりして保証人への弁償にかえることができるし、自分で弁済するとか、債権者に頼んで保証債務を免除させることもできる。 |
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第462条 【委託を受けない保証人の求償権】 ? 主たる債務者の委託を受けないで保証をした者が弁済をし、その他自己の財産をもって主たる債務者にその債務を免れさせたときは、主たる債務者は、その当時利益を受けた限度において償還をしなければならない。 ? 主たる債務者の意思に反して保証をした者は、主たる債務者が現に利益を受けている限度においてのみ求償権を有する。この場合において、主たる債務者が求償の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。 |
? 主債務者に頼まれないでなった保証人が、勝手に債務を弁済し、また代物弁済、供託、更改、相殺、混同などの方法で債務を消滅させた場合は、主債務者は、その当時利益を受けた限度内で弁償すればよい。 ? 主債務者の反対にもかかわらず保証人となった者が弁償を求めるときは、その額は主債務者が現に利益を受ける限度内に限られる。ただし、主債務者が弁償を要求された日以前に債権者に反対債権をもっており、これで相殺できたときは、その分だけは弁償する必要は無い。この場合は、その分だけ、保証人は債権者から反してもらうことになる。 例えば、主債務者Aの保証人Bが3月1日に100万円の債務を債権者Cに弁済し、Aに弁償を要求したとする。もしAがCに2月1日において反対債権40万円を取得して、この債権で保証人Bの100万円の求償権に対抗したときは、保証人は60万円しか弁償してもらえず、残りの40万円は債権者から返してもらうことになる。 |
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第463条 【通知を怠った保証人の求償の制限】 ? 第443条の規定は、保証人について準用する。 ? 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、善意で弁済をし、その他自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為をしたときは、第443条の規定は、主たる債務者についても準用する。 |
? 保証人が主債務者に通知しないで弁済したり、弁済したことを通知しなかったときは、賠償の要求が制限される。 ? 保証人が、主債務者に頼まれて保証人となった場合、主債務者が弁済してしまったことを知らずに弁済したときは、第443条の規定を準用する。保証人は自分の弁済のほうが有効であるとして、主債務者に弁償を求めることができる。弁済以外にも代物弁済、供託、更改、相殺、混同などの方法で債務を消滅させた場合も同様である。 |
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第464条 【連帯債務又は不可分債務の保証人の求償権】 連帯債務者又は不可分債務者の一人のために保証をした者は、他の債務者に対し、その負担部分のみについて求償権を有する。 |
連帯債務者や不可分債務者の中の誰か一人のために保証人となって、弁済などで債務を消滅させたときは、保証しなかった他の債務者からもその負担部分について、弁償を要求できる。 | ||||||||||||
第465条 【共同保証人間の求償権】 ? 第442条から第444条までの規定は、数人の保証人がある場合において、そのうちの一人の保証人が、主たる債務が不可分であるため又は各保証人が全額を弁済すべき旨の特約があるため、その全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。 ? 第462条の規定は、前項に規定する場合を除き、互いに連帯しない保証人の一人が全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。 |
一個の債務につき数人の保証人がいる場合には、原則としてそれぞれの共同保証人は自分の負担する部分だけを弁済すればよい。これを分別の利益という。 しかし、共同保証人が分別の利益を持たない場合や、分別の利益を持つが自分の負担する部分を越えて弁済した場合は、他の保証人に求償できるか否かを、できるならどの範囲までかを定めたのが本条である。 ? 主債務が不可分債務であったり、各保証人が全額を弁済する特約をしていた場合は、ある一人の保証人が全額か自分の負担部分をこえて弁済したときは、第442条から第444条までの規定を準用して、他の保証人に弁償を求めることができる。 ? 保証人が数人いても連帯していないときは、各保証人は頭割りの保証債務しか負担しないことになり、保証人の一人が全額または自分の負担部分をこえて弁済しても、第462条の規定を準用する。 |
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第4款 第2目 第465条の2 【貸金等根保証契約の保証人の責任等】 ? 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であってその債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務(以下「貸金等債務」という。)が含まれるもの(保証人が法人であるものを除く。以下「貸金等根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。 ? 貸金等根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。 ? 第446条第2項及び第3項の規定は、貸金等根保証契約における第1項に規定する極度額の定めについて準用する。 |
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第465条の3 【貸金等根保証契約の元本確定期日】 ? 貸金等根保証契約において主たる債務の元本の確定すべき期日(以下「元本確定期日」という。)の定めがある場合において、その元本確定期日がその貸金等根保証契約の締結の日から5年を経過する日より後の日と定められているときは、その元本確定期日の定めは、その効力を生じない。 ? 貸金等根保証契約において元本確定期日の定めがない場合(前項の規定により元本確定期日の定めがその効力を生じない場合を含む。)には、その元本確定期日は、その貸金等根保証契約の締結の日から3年を経過する日とする。 ? 貸金等根保証契約における元本確定期日の変更をする場合において、変更後の元本確定期日がその変更をした日から5年を経過する日より後の日となるときは、その元本確定期日の変更は、その効力を生じない。ただし、元本確定期日の前2箇月以内に元本確定期日の変更をする場合において、変更後の元本確定期日が変更前の元本確定期日から5年以内の日となるときは、この限りでない。 ? 第446条第2項及び第3項の規定は、貸金等根保証契約における元本確定期日の定め及びその変更(その貸金等根保証契約の締結の日から3年以内の日を元本確定期日とする旨の定め及び元本確定期日より前の日を変更後の元本確定期日とする変更を除く。)について準用する。 |
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第465条の4 【貸金等根保証契約の元本の確定事由】 次に掲げる場合には、貸金等根保証契約における主たる債務の元本は、確定する。 1 債権者が、主たる債務者又は保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。ただし、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。 2 主たる債務者又は保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。 3 主たる債務者又は保証人が死亡したとき。 |
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第465条の5 【保証人が法人である貸金等債務の根保証契約の求償権】 保証人が法人である根保証契約であってその主たる債務の範囲に貸金等債務が含まれるものにおいて、第465条の2第1項に規定する極度額の定めがないとき、元本確定期日の定めがないとき、又は元本確定期日の定め若しくはその変更が第465条の3第1項若しくは第3項の規定を適用するとすればその効力を生じないものであるときは、その根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権についての保証契約(保証人が法人であるものを除く。)は、その効力を生じない。 |
Author:民法マン
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