民法 条文 | 民法 解説 | ||||||||||||||||||||||||||||
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第3編 債権 第2章 契約 第1節 総則 |
契約とは、約束であって、法律によってその履行が保護されているものである。通常、申込と承諾の意思表示の合致により成立する。 民法において契約は13種類定められている。これらを有名契約という。だが、契約自由の原則によりこれらに限定されず、各人は自由に契約を結ぶことができる。これらを無名契約という。 契約の分類などについては以下の表を参照。
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第1款 契約の成立 第521条 【承諾の期間の定めのある申込み】 ? 承諾の期間を定めてした契約の申込みは、撤回することができない。 ? 申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。 |
? 承諾期間をいつまでと定めた場合は、その期間内は申込みをとりやめることができない。 ? 承諾期間内に相手方から承諾の通知がこなかったら、申込みは効力を失ってしまい、契約は成立しない。 |
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第522条 【承諾の通知の延着】 ? 前条第1項の申込みに対する承諾の通知が同項の期間の経過後に到達した場合であっても、通常の場合にはその期間内に到達すべき時に発送したものであることを知ることができるときは、申込者は、遅滞なく、相手方に対してその延着の通知を発しなければならない。ただし、その到達前に遅延の通知を発したときは、この限りでない。 ? 申込者が前項本文の延着の通知を怠ったときは、承諾の通知は、前条第1項の期間内に到達したものとみなす。 |
? 承諾の通知が承諾期間をすぎた後に到着した場合でも、普通ならば期間内に到着したはずだったことが郵便の消印などによってわかるときは、申込者はすぐ承諾者に対して延着したことを通知しなければならない。ただし、承諾の通知が到着する前に、すでに遅れていることの通知を出していればその必要は無い。 ? 申込者が?の延着通知を怠った時は、承諾の通知は延着でなく、期日までに到着したのと同じに扱われ、その結果、契約は承諾の通知を発した時に成立したことになる。 |
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第523条 【遅延した承諾の効力】 申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる。 |
申込者は遅延した承諾を、申込者のほうで承諾としてではなく、別の新しい申込みとして取り扱うことができる。この場合、申込者がこれに対して改めて承諾をすることによって契約は成立する。 | ||||||||||||||||||||||||||||
第524条 【承諾の期間の定めのない申込み】 承諾の期間を定めないで隔地者に対してした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。 |
承諾の期間を定めずに遠隔地にいる者に対して契約の申込みをしたときは、申込者が承諾の通知を受けるまでの相当な期間内は、申込みを撤回することができない。 遠隔地にいる者とは、直接話しのできないところにいる者のことである。電話で話ができるような場合は、どれだけ遠くに離れていても隔地者ではなく対話者となる。 |
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第525条 【申込者の死亡又は行為能力の喪失】 第97条第2項の規定は、申込者が反対の意思を表示した場合又はその相手方が申込者の死亡若しくは行為能力の喪失の事実を知っていた場合には、適用しない。 |
申込みの通知を出した後に申込者が死亡しても、その申込みは効力を失わない。その相続人を当事者として契約が成立する。これは、申込者が制限能力者となった場合も同様で、申込みは制限能力者を当事者として契約が成立する。 しかし、申込者があらかじめ、「自分が死亡したときや制限能力者となったときは、契約は成立しない」と、通知していたときや、申込者が死亡したり制限能力者になっていたことを事前に知っていたときは、申込みは効力を失い、契約は成立しない。 |
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第526条 【隔地者間の契約の成立時期】 ? 隔地者間の契約は、承諾の通知を発した時に成立する。 ? 申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。 |
? 遠隔地にいる者同士の契約は、承諾の通知が到達したときではなく、承諾の通知を発信した時に成立する。 ? 申込者が受諾の通知をしなくてもよいといったときや、承諾の通知を必要としない取引上の慣習があるときは、承諾したと認められるような事実があったときに契約は成立する。 |
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第527条 【申込みの撤回の通知の延着】 ? 申込みの撤回の通知が承諾の通知を発した後に到達した場合であっても、通常の場合にはその前に到達すべき時に発送したものであることを知ることができるときは、承諾者は、遅滞なく、申込者に対してその延着の通知を発しなければならない。 ? 承諾者が前項の延着の通知を怠ったときは、契約は、成立しなかったものとみなす。 |
? 申込みを取りやめるという通知が、承諾の通知を出した後に到着した場合でも、普通ならば期間内に到着したはずだったことが郵便の消印などによってわかるときは、承諾者はすぐ申込者に対して延着したことを通知しなければならない。 ? 承諾者が?の延着通知を怠った時は、申込みを取りやめるという通知は延着でなく、正式に到着したのと同じに扱われ、たとえ承諾の通知を出した後であっても、契約は成立しなかったことになる。 |
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第528条 【申込みに変更を加えた承諾】 承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす。 |
承諾者が、申込みに対して条件をつけたり、内容を変更して承諾した時は、初めの申込みを拒絶して、承諾者のほうで新しく申込みをしたものとして取り扱われる。したがって、初めに申込みをしたものが、改めて承諾しない限り、契約は成立しない。 | ||||||||||||||||||||||||||||
第529条 【懸賞広告】 ある行為をした者に一定の報酬を与える旨を広告した者(以下この款において「懸賞広告者」という。)は、その行為をした者に対してその報酬を与える義務を負う。 |
広告で指定した行為をした者に一定の報酬を与えるとすることを懸賞広告という。この懸賞広告をした者は定めた行為をした者に対して報酬を与える義務を負う。 懸賞広告とは、例えば、この紛失物を探して見つけたくれた人に、いくら支払うなどといった場合である。 |
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第530条 【懸賞広告の撤回】 ? 前条の場合において、懸賞広告者は、その指定した行為を完了する者がない間は、前の広告と同一の方法によってその広告を撤回することができる。ただし、その広告中に撤回をしない旨を表示したときは、この限りでない。 ? 前項本文に規定する方法によって撤回をすることができない場合には、他の方法によって撤回をすることができる。この場合において、その撤回は、これを知った者に対してのみ、その効力を有する。 ? 懸賞広告者がその指定した行為をする期間を定めたときは、その撤回をする権利を放棄したものと推定する。 |
? 懸賞広告をした者は、その指定した行為を完了した者がいない間は、途中でとりやめることができる。ただし、前の広告と同じ方法でとりやめなければならない。もっとも、はじめの広告で、途中でとりやめることはしないと発表していた時は、とりやめすることはできない。 ? 懸賞広告を途中でとりやめにする場合、前の広告と同じ方法でできないときは、他の方法で広告してもよい。ただし、その広告を知った者にだけしかとりやめの効力がなく、知らないで指定された行為を完了した者があれば、報酬を与えなければならない。 ? 期間を定めて懸賞広告をした場合は、その期間内はとりやめにすることはできない。ただし、とりやめにする権利を放棄したのではないということを証明すれば、途中でとりやめてもよい。 |
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第531条 【懸賞広告の報酬を受ける権利】 ? 広告に定めた行為をした者が数人あるときは、最初にその行為をした者のみが報酬を受ける権利を有する。 ? 数人が同時に前項の行為をした場合には、各自が等しい割合で報酬を受ける権利を有する。ただし、報酬がその性質上分割に適しないとき、又は広告において一人のみがこれを受けるものとしたときは、抽選でこれを受ける者を定める。 ? 前2項の規定は、広告中にこれと異なる意思を表示したときは、適用しない。 |
? 懸賞広告で定めた行為を完了した者が数人いるときは、その行為をなした最初の者だけが報酬を受ける権利がある。 ? 数人が同時に広告で指定された行為を完了した場合は、その数人が平等の割合で報酬を受けることになる。ただし、報酬の性質上分割できない場合や一人だけが報酬を受けるものと定められている場合は、抽選となる。 ? 広告の中であらかじめ、?と?とは別のことが書かれていたときは、それに従う。 |
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第532条 【優等懸賞広告】 ? 広告に定めた行為をした者が数人ある場合において、その優等者のみに報酬を与えるべきときは、その広告は、応募の期間を定めたときに限り、その効力を有する。 ? 前項の場合において、応募者中いずれの者の行為が優等であるかは、広告中に定めた者が判定し、広告中に判定をする者を定めなかったときは懸賞広告者が判定する。 ? 応募者は、前項の判定に対して異議を述べることができない。 ? 前条第2項の規定は、数人の行為が同等と判定された場合について準用する。 |
? 懸賞広告で指定された行為をなした者のうち、一番優れた者にだけ報酬を与えるとするものを優等懸賞広告という。この場合には、必ず応募期間を定めておかなければならない。 ? 優等懸賞広告の場合、応募者のうち誰が優等であるかを決めるのは、広告中に定めた判定者である。判定者を定めなかった場合は広告者自身が判定する。 ? 応募者は、決められた優等者に文句を言うことはできない。 ? 応募者のうち数人の行為が同等と判定された場合は、第531条第2項を準用する。つまり、分割できる時は頭割りにし、できないときは抽選できめる。 |
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第2款 契約の効力 第533条 【同時履行の抗弁】 双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。 |
同時履行の抗弁権とは、双務契約における当事者の一方が、相手方が債務の履行を提供するまで自己の債務の履行を拒絶することができる権利である。ただし、相手方の債務の弁済期が到来していない場合、この権利は主張できない。 例えば、AはBから1万円の商品を買ったとする。AはBから商品をもらうまで、お金を支払う必要はないし、BはAからお金を支払ってもらうまで、商品を渡す必要は無い。 |
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第534条 【債権者の危険負担】 ? 特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。 ? 不特定物に関する契約については、第401条第2項の規定によりその物が確定した時から、前項の規定を適用する。 |
本条は危険負担についてかかれている。 債権発生後、債務者の責めに帰すべき事由によって履行不能となった場合は、第415条の債務不履行の問題となる。 だが、債務者の責めに帰すべからざる事由、例えば、債権者や第三者の故意・過失、自然災害などの不可抗力によって給付が不能となった場合には、その債務は消滅するが、この場合、他の一方の負担する債務をどう取り扱うかが危険負担の問題である。 危険負担には、対価は消滅しないとする債権者主義と、対価も消滅するという債務者主義の2種類がある。
本条では、債権者が危険を負担する場合について書かれている。 ? 特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的としている場合、債務者の責めに帰すべき事由によらない原因で、履行不能となったときは、債権者の負担とする。 ? 双務契約の目的が不特定物に関するものの場合、不特定物が特定物になった時から、?の規定が適用され、債権者の負担とする。 特定物と不特定物については、第400条と第401条も参照。 |
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第535条 【停止条件付双務契約における危険負担】 ? 前条の規定は、停止条件付双務契約の目的物が条件の成否が未定である間に滅失した場合には、適用しない。 ? 停止条件付双務契約の目的物が債務者の責めに帰することができない事由によって損傷したときは、その損傷は、債権者の負担に帰する。 ? 停止条件付双務契約の目的物が債務者の責めに帰すべき事由によって損傷した場合において、条件が成就したときは、債権者は、その選択に従い、契約の履行の請求又は解除権の行使をすることができる。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。 |
? 停止条件付双務契約の場合、目的物が条件の成否が確定する前に、滅失したときは、第534条の規定は適用されない。つまり、債務者の負担となる。 例えば、A(債権者)がB(債務者)から、「今年、東京に転勤になったらBの自転車を買う」という停止条件付双務契約をしたとする。しかし、Aが東京に転勤になることが決まる前に、Bの自転車が滅失したときは、たとえその後にAが東京に転勤になっても、Bは代金を請求できない。 ? 停止条件付双務契約の場合、目的物が債務者の責めに帰すべき事由によらない原因で、損傷した時は、債権者の負担とする。 例えば、A(債権者)がB(債務者)から、「今年、東京に転勤になったらBの自転車を買う」という停止条件付双務契約をしたとする。しかし、自転車は暴風で一部損傷してしまった。そして、Aは東京に転勤した。この場合、Bは自転車をAに引き渡して、代金を請求することができる。 ? 停止条件付双務契約の場合、目的物が債務者の責めに帰すべき事由が原因で、損傷し、条件が成就した時は、債権者は履行の請求をしてもよいし、契約の解除をしてもよい。いずれの場合においても、損害が発生していたら賠償を請求することができる。 |
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第536条 【債務者の危険負担等】 ? 前2条に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。 ? 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。 |
? 第534条と第535条に規定されている以外の双務契約について、当事者の責めに帰すべき事由ではない原因で、債務の履行ができなくなった時は、債務者は反対給付を受ける権利が無い。つまり、債務者の負担とする。 ? 第534条と第535条に規定されている以外の双務契約について、債権者の責めに帰すべき事由が原因で、債務の履行ができなくなった時は、債務者は反対給付を受ける権利を有する。ただし、このために債務者がなんらかの利益を受けた時は、その分を債権者に返さなければならない。 ?に書かれているように、基本的に民法は危険負担について債務者主義を原則としている。賃貸借、雇用、請負などの契約では本条が適用される。だが、危険負担が一番問題となる売買については特定物である場合が多く、第534条が適用されることが多いので、本条が適用されることは意外と少ない。 また、実際の取引では、危険負担について特約がある場合が多いので、民法の規定どおりにいかない場合もよくある。 |
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第537条 【第三者のためにする契約】 ? 契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。 ? 前項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。 |
第三者のためにする契約とは、第三者に権利を取得させようとする約束を伴う契約のことである。 例えば、AとBが自転車の売買をするにあたって、AはBに自転車を引き渡すが、Bは代金をCに支払うという契約のことである。Aは要約者、Bは諾約者、Cは第三者とか受益者と呼ばれる。 この契約は、代金の受け渡しの手間を省くための制度である。保険金受取人のときにもこの制度が使われている。 ? 第三者のためにする契約において、第三者は債務者に直接請求する権利を有する。 ? ?の場合において、第三者の権利は、第三者が債務者に対して、「契約の利益は自分が享受する」という意思表示をした時に、発生する。 |
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第538条 【第三者の権利の確定】 前条の規定により第三者の権利が発生した後は、当事者は、これを変更し、又は消滅させることができない。 |
第三者のためにする契約において、第三者の権利が発生した時は、契約の当事者は第三者の権利を変更したり消滅させたりすることはできない。つまり、第三者の権利は発生した時に、確定的なものである。 | ||||||||||||||||||||||||||||
第539条 【債務者の抗弁】 債務者は、第537条第1項の契約に基づく抗弁をもって、その契約の利益を受ける第三者に対抗することができる。 |
債務者は債権者に対するなんらかの抗弁権を持っているときは、それをもって第三者に対抗することができる。 例えば、AとBが自転車の売買をするにあたって、AはBに自転車を引き渡すが、Bは代金をCに支払うという契約において、Aが自転車を引き渡さないときは、Bは同時履行の抗弁権を理由にCに代金の支払いを拒否できる。 |
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第3款 契約の解除 第540条 【解除権の行使】 ? 契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。 ? 前項の意思表示は、撤回することができない。 |
契約の解除は、当事者の一方的な通知により、相手方の立場にかかわらず契約をはじめからなかったことにしてしまうことである。これを行う時は、解除するための理由と権限が必要である。 ? 当事者間の特約や法律の規定によって解除権を持っているときは、一方的な意思表示によって契約を解除することができる。相手方の承諾などは不要である。 ? 一度、契約を解除するという意思表示をしたら、取り消すことはできない。 |
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第541条 【履行遅滞等による解除権ー解除権が発生する場合その1】 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。 |
当事者の一方が債務の履行をしない時は、相当の期間を定めて債務を履行するよう催告し、それでも債務を履行しない時にはじめて契約を解除することができる。 |
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第542条 【定期行為の履行遅滞による解除権ー解除権が発生する場合その2】 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、前条の催告をすることなく、直ちにその契約の解除をすることができる。 |
契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時や一定の期間内に、債務の履行が無ければ、契約の意味が無いような場合は、その期日や期間が過ぎればすぐに契約を解除することができる。 例えば、誕生日が4月1日であり、その日にバースデイケーキを届けてくれるように頼んだが、届けられなかった場合、その日を過ぎればすぐに契約を解除することができる。 |
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第543条 【履行不能による解除権ー解除権が発生する場合その3】 履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。 |
債務の全部又は一部が、債務者の責任で履行できなくなった場合は、すぐに契約を解除できる。 一部について履行不能となった場合は、その一部が非常に重要でありその一部が履行されないと債務全体の意味がなくなるようなときにだけ解除ができる。そうでない些細な一部について履行不能の場合は、その一部だけの解除ができると解されている。 |
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第544条 【解除権の不可分性】 ? 当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができる。 ? 前項の場合において、解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅する。 |
? 契約の当事者の一方が数人いる場合、契約の解除は、一方から全員に対して又は全員から一方に対してしなければならない。これを解除権不可分の原則といい、本条が無ければ、ある一人は契約が解除され、ある一人は契約が存続しているなど、複雑になってしまう。 ? ?の場合、当事者の一人について解除権が消滅すれば他の者についての解除権も消滅する。 |
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第545条 【解除の効果】 ? 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。 ? 前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。 ? 解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。 |
? 契約を解除すると、契約ははじめからなかったことになる。契約が解除された場合、履行が無ければお互い義務を免れるだけだが、履行が済んでいるときは、互いに元に戻す義務を負う(原状回復義務)。ただし、第三者が権利を取得していた時は、そのまま認められ、権利を失うことは無い。 ? 原状回復義務を負い、相手に金銭を返還する場合は、それに利息をつけなければならない。 ? 契約の解除をしても、損害が生じているときは、損害賠償の請求をすることができる。 |
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第546条 【契約の解除と同時履行】 第533条の規定は、前条の場合について準用する。 |
同時履行の抗弁権の規定は、第546条についても準用する。 つまり、当事者が互いに原状回復義務を負っている場合は、相手が原状回復義務を履行しない限り、自分の原状回復義務の履行を拒むことができる。損害賠償の請求についても同様である。 |
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第547条 【催告による解除権の消滅】 解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は、消滅する。 |
契約の解除権を行使できる期間を定めなかったときは、相手方は、解除権を持つ者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除するかどうかを催告することができる。もし、その期間内に解除の通知がなければ解除権は消滅してしまう。 | ||||||||||||||||||||||||||||
第548条 【解除権者の行為等による解除権の消滅】 ? 解除権を有する者が自己の行為若しくは過失によって契約の目的物を著しく損傷し、若しくは返還することができなくなったとき、又は加工若しくは改造によってこれを他の種類の物に変えたときは、解除権は、消滅する。 ? 契約の目的物が解除権を有する者の行為又は過失によらないで滅失し、又は損傷したときは、解除権は、消滅しない。 |
? 解除権を持つ者が、故意や過失で契約の目的物を壊したり、相手に返還できない状態にしてしまったとき、又は目的物に手を加えて全然別のものにしてしまったときは、解除権は消滅する ? 解除権を持つ者が故意や過失でやったのでない限り、目的物が壊れたりなくなったりしても、解除権は消滅しない。 例えば、AがBに自転車を売る契約をして、Bの代金不払いを理由にAが解除権を持つ場合、Aがわざと自転車を壊せば解除権は消滅するが、暴風で自転車が壊れた場合は解除権は消滅しない。 |
Author:民法マン
秩序のない現代にドロップキック!
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