民法 条文 | 民法 解説 |
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第3編 債権 第2章 契約 第8節 雇用 |
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第623条 【雇用】 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。 |
雇用契約は、雇われる者が雇い主に対して労務に従うことを約束し、雇い主がその対価として報酬を支払うことを約束することによって成立する契約である。 雇い主のことを使用者といい、雇われる者のことを労務者という。 諾成契約、双務契約、有償契約である。 例えば、Aは月収20万円でBの労務に服する契約をしたとき、Aを労務者、Bを使用者という。AはBに対して報酬を請求できるが、Bの労務に従わなければならない。 民法に規定されている雇用は、対等な個人間の自由意志に基づく約束ということが基調になっているが、現代の雇用の現状とはあわない。労働基準法や労働組合法などの適用を受ける場合が多い。 つまり、民法の雇用の規定が実際に適用される場合は少なく、個人的使用人ぐらいとなる。 |
第624条 【報酬の支払時期】 ? 労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。 ? 期間によって定めた報酬は、その期間を経過した後に、請求することができる。 |
? 労働者は、約束どおりに働いた後でなければ報酬を請求することはできない。 ? 一定期間働いた対価としていくら支払うというように定めた報酬は、その期間が過ぎた後に請求できる。 本条は、賃金後払いの原則について定められている。 ただし、労働基準法では、賃金は毎月一回以上、一定期日に支払わなければならないとされている。 |
第625条 【使用者の権利の譲渡の制限等】 ? 使用者は、労働者の承諾を得なければ、その権利を第三者に譲り渡すことができない。 ? 労働者は、使用者の承諾を得なければ、自己に代わって第三者を労働に従事させることができない。 ? 労働者が前項の規定に違反して第三者を労働に従事させたときは、使用者は、契約の解除をすることができる。 |
? 使用者は、労働者の承諾が無ければ、第三者のために働かせることはできない。 ? 労働者は、使用者の承諾が無ければ、第三者に代わりとして働いてもらうことはできない ? もし労働者が?に違反して、第三者に働かせたときは、使用者は契約を解除することができる。 |
第626条 【期間の定めのある雇用の解除】 ? 雇用の期間が5年を超え、又は雇用が当事者の一方若しくは第三者の終身の間継続すべきときは、当事者の一方は、5年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。ただし、この期間は、商工業の見習を目的とする雇用については、10年とする。 ? 前項の規定により契約の解除をしようとするときは、3箇月前にその予告をしなければならない。 |
? 雇用契約の続く期間が5年を超え、または使用者か労働者の一方や第三者が死ぬまで続くという約束をしたときは、当事者の一方は初めの契約の時から5年を過ぎれば、いつでも契約を解除することができる。ただし、5年という期間は、商工業の見習いの者の雇用契約については10年とする。 ? ?の規定により解約をするときは、3ヶ月前に予告をしなければならない。 |
第627条 【期間の定めのない雇用の解約の申入れ】 ? 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。 ? 期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。 ? 6箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、3箇月前にしなければならない。 |
? 働く期間を定めなかった時は、使用者と労働者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合には、解約の申入れをした後2週間過ぎると、当然に契約は終了する。 ? 期間を決めて報酬を定めた場合には、次の期間以後について解約をすることができる。ただし、申入れは、当期の前半に申し入れなければならない。 ? 6カ月以上の期間で報酬を決めた場合は、?の申入れは、3ヶ月前にしなければならない。 |
第628条 【やむを得ない事由による雇用の解除】 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。 |
期間を定めた雇用契約であっても、やむを得ない事情がある場合は、使用者と労働者は、いつでも解約の申入れをすることができる。ただし、その事由がどちらか一方の過失による場合は、もう一方に対して損害の賠償をしなければならない。 |
第629条 【雇用の更新の推定等】 ? 雇用の期間が満了した後労働者が引き続きその労働に従事する場合において、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第627条の規定により解約の申入れをすることができる。 ? 従前の雇用について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。ただし、身元保証金については、この限りでない。 |
? 雇用契約の期間が終わっても労働者が引き続き働いている場合、使用者がそのことを知りながら異議を述べない時は、特別の事情がない限り、前と同じ雇用契約を結んだと推定される。ただし、この更新された契約は、使用者と労働者は、第627条の規定により解約の申入れをすることができる。 ? 前の雇用契約について当事者が保証人など担保を差し入れてるときは、雇用契約の終了によって消滅する。ただし、身元保証金は消滅しない。 |
第630条 【雇用の解除の効力】 第620条の規定は、雇用について準用する。 |
雇用契約を解除した場合は、将来効であり、過去の権利義務を消滅させることはない。したがって、過失のある当事者の負っている損害賠償義務にも影響はない。 |
第631条 【使用者についての破産手続の開始による解約の申入れ】 使用者が破産手続開始の決定を受けた場合には、雇用に期間の定めがあるときであっても、労働者又は破産管財人は、第627条の規定により解約の申入れをすることができる。この場合において、各当事者は、相手方に対し、解約によって生じた損害の賠償を請求することができない。 |
使用者が破産の宣告を受けた時は、雇用契約に期間の定めがあるときであっても、労働者又は破産管財人は第627条の規定によって解約の申入れをすることができる。この場合、雇用契約の当事者は、相手方に向かって解約によって生じた損害の賠償を請求することができない。 |
Author:民法マン
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