民法 条文 | 民法 解説 |
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第3編 債権 第2章 契約 第10節 委任 |
委任については下の図を参照。 |
第643条 【委任】 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。 |
委任契約は、依頼をする者が依頼を受ける者を信頼して、法律行為をするなど事務を処理することを依頼し、受任者がこれを引き受けることによって成立する契約である。 諾成契約である。有償の場合は双務契約で、無償の場合は片務契約である。 例えば、委任者Aが受任者Bに小切手を振り出すことを依頼したとする。これを委任といい、有償の場合はBに報酬請求権がある。 条文では法律行為だけが書かれているが、必ずしも法律行為だけには限定されない。また、法律行為の委任の場合は、特別の事情がない限り代理権の授与を伴っていると考えられている。 |
第644条 【受任者の注意義務】 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。 |
受任者は、委任契約の趣旨に従って、善良な管理者としての注意義務をもって委任事務を処理しなければならない。 本条の善管注意義務は、有償委任と無償委任のどちらでも同じである。 善良な管理者の注意については、第400条を参照。 |
第645条 【受任者による報告】 受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。 |
受任者は、委任者の請求があったときは、いつでも委任された事務の処理状況を報告しなければならない。また、委任契約の終了した後は、できるだけ早く、事務内容の経緯を報告しなければならない。 |
第646条 【受任者による受取物の引渡し等】 ? 受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない。その収取した果実についても、同様とする。 ? 受任者は、委任者のために自己の名で取得した権利を委任者に移転しなければならない。 |
? 受任者は、委任事務を処理するに当たって、金銭その他の物品を受け取っていたときは、それを委任者に引き渡さなければならない。委任事務を処理する上で、果実を得たときも、それを委任者に引き渡さなければならない。 ? 受任者が、委任者のために自分の名義で得た権利も、委任者に移転する手続きをとって引き渡さなければならない。 |
第647条 【受任者の金銭の消費についての責任】 受任者は、委任者に引き渡すべき金額又はその利益のために用いるべき金額を自己のために消費したときは、その消費した日以後の利息を支払わなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。 |
受任者が、委任者に引き渡さなければならない金銭、または委任者の利益のために使用しなければならない金銭を、受任者自身のために消費してしまったときは、その時以後の利息もあわせて委任者に支払わなければならない。なお、そのための損害が委任者に生じたときは、それをも賠償しなければならない。 |
第648条 【受任者の報酬】 ? 受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。 ? 受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。ただし、期間によって報酬を定めたときは、第624条第2項の規定を準用する。 ? 委任が受任者の責めに帰することができない事由によって履行の中途で終了したときは、受任者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。 |
? 受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。 ? 受任者が報酬を受ける特約がある場合、受任者は、委任事務を処理した後にその報酬を請求することができる。ただし、期間で報酬を定めたときは、第624条第2項の規定に従い、その期間経過後に請求できる。 ? 受任者の責任によらないで委任事務の処理中に契約が終了したときは、受任者は、すでになした事務処理の割合に応じて、報酬を請求することができる。 |
第649条 【受任者による費用の前払請求】 委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない。 |
委任事務を処理するにあたって、費用がかかるときは、受任者はいつでもこれを請求することができ、委任者は、受任者の請求がありしだい、この費用を前払いしなければならない。 |
第650条 【受任者による費用等の償還請求等】 ? 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。 ? 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。 ? 受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。 |
? 受任者が委任事務を処理するにあたって必要な費用を支出したときは、委任者にその費用および支出の日以後の利息の弁償を請求することができる。 ? 受任者が、委任事務を処理するにあたって必要な債務を負ったときは、委任者に、その債務を弁済してもらうことができる。またその債務について、支払い期がまだきていないときは、債務金額に相当する担保を、差し出させることができる。 ? 受任者が委任事務を処理するにあたって、受任者に過失がないのに損害を受けたときは、委任者に対してその損害の賠償を請求することができる。 |
第651条 【委任の解除】 ? 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。 ? 当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。 |
? 委任契約は、委任者と受任者のどちらからでも、いつでも、解約できる。 ? 委任者と受任者のどちらでも、相手方にとって不利な時期に委任契約を解約したときは、解約によって生じた損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事情があり解約したときは、損害を賠償する必要はない。 委任契約はお互いの信頼に基づいてなされる契約であるから、それらが失われたときはいつでも解約できるとされている。 |
第652条 【委任の解除の効力】 第620条の規定は、委任について準用する。 |
委任契約を解約しても、その効力は過去の権利義務を消滅させることはなく、将来効である。 |
第653条 【委任の終了事由】 委任は、次に掲げる事由によって終了する。 1 委任者又は受任者の死亡 2 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。 3 受任者が後見開始の審判を受けたこと。
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委任は、次の事由により終了する。 1、委任者または受任者の死亡 2、委任者または受任者が破産手続開始の決定をうけたこと 3、受任者が後見開始の審判をうけたこと |
第654条 【委任の終了後の処分】 委任が終了した場合において、急迫の事情があるときは、受任者又はその相続人若しくは法定代理人は、委任者又はその相続人若しくは法定代理人が委任事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければならない。 |
委任契約が終了しても、差し迫った事情のある時は、受任者(受任者の相続人や法定代理人も含む)は、委任者(委任者の相続人や法定代理人も含む)が委任事務を自分で処理することができるようになるまで、必要な事務処理を続けなければならない。 |
第655条 【委任の終了の対抗要件】 委任の終了事由は、これを相手方に通知したとき、又は相手方がこれを知っていたときでなければ、これをもってその相手方に対抗することができない。 |
委任契約終了の原因が、委任者または受任者のどちら側にあるときでも、そのことを契約の相手方に通知しなければ、契約が終了したことをその相手方に主張できない。通知が無くても、相手方がそれを知っている場合は、通知した場合と同様に主張できる。 |
第656条 【準委任】 この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。 |
本節に規定した法律行為の委任の規定は、すべて法律行為以外の事務の委任についても同じように取り扱う。 法律行為以外の事務の委任を、準委任という。例えば、損益計算書などの財務諸表の作成事務を税理士に依頼することなどは、法律行為の委任ではなく準委任である。 |
Author:民法マン
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