民法 条文 | 民法 解説 |
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第3編 債権 第4章 不当利得 |
民法では、契約に基づかない債権の発生原因として、事務管理、不当利得、不法行為の3つの制度を定めている。 不当利得は、下の図を参照。 |
第703条 【不当利得の返還義務】 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。 |
法律上の原因がないにもかかわらず、他人の財産を自分のものにしたり、他人を働かせたりして、自分だけ利益を得て、そのために他人が損害を受けたときには、不当利得が成立する。この場合は、その利益を返さなければならないのであるが、利得者が悪質でない場合は、その利益が現在もなお残っているときに限り、その範囲内で返せばよい。 |
第704条 【悪意の受益者の返還義務等】 悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。 |
法律上の原因がないことを知っていながら利益を得た者は、悪質であるから、現存する利益だけでなく、受け取った利益に加えてその利息を付けて返さなくてはならない。また損害をかけているならその賠償もしなければならない。 |
第705条 【債務の不存在を知ってした弁済】 債務の弁済として給付をした者は、その時において債務の存在しないことを知っていたときは、その給付したものの返還を請求することができない。 |
債務の無いことを知っていながら弁済したときは、返還を請求することができない。 第705条から第708条までを非債弁済といい、不合理な行為は保護されないとしている。 第705条は、相手方に贈与したことと同じ扱いとなり、保護されない。ただし、債務のないことを知っていた場合でも、脅迫されてやむを得ずに支払ったなど自ら進んで給付したといえないときは、本条の適用はない。 |
第706条 【期限前の弁済】 債務者は、弁済期にない債務の弁済として給付をしたときは、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、債務者が錯誤によってその給付をしたときは、債権者は、これによって得た利益を返還しなければならない。 |
債務者がまだ弁済期がきていないのを知っていながら弁済したときは、一旦弁済したものを返還してもらうことはできない。ただし、債務者が思い違いをして期限前に弁済してしまったときは、債権者は早く弁済してもらったことによる利益(利息相当分)を、返さなくてはならない。 |
第707条 【他人の債務の弁済】 ? 債務者でない者が錯誤によって債務の弁済をした場合において、債権者が善意で証書を滅失させ若しくは損傷し、担保を放棄し、又は時効によってその債権を失ったときは、その弁済をした者は、返還の請求をすることができない。 ? 前項の規定は、弁済をした者から債務者に対する求償権の行使を妨げない。 |
? 債務者でない者が思い違いで債務を弁済した場合でも、債権者も正当な債務者から弁済してもらったと勘違いして債権証書を破棄したり、担保を放棄したりしてしまったときは、一旦弁済したものを返してもらうことはできない。また、債権者が債務が弁済されたとばかり思って、時効中断の手続きなどをしなかったために、本当の債権が時効にかかってしまったときも同様である。 ? ?の場合、思い違いで弁済した者は、本当の債務者に対して弁済するよう請求することができる。 |
第708条 【不法原因給付】 不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。 |
法律上許されていない取引をして、自ら進んで財産を渡した者は、その返還を請求することができない。ただし、法律上許されない原因が、利益を受けた者にだけあるときは返してもらえる。 本条はクリーンハンズの原則による。 例えば、AとBが賭博をして、負けたBがAに1万円を支払った。だが、賭博は公序良俗違反で無効だから、Bは債務がないのに弁済したこととなり、Aに対して返還を請求できるはずである。だが、本条で不法な原因により給付をしたものは、保護されないとしているので、当然BはAに返還を請求できない。 また、判例では、芸妓が年期中に廃業し、特約にしたがって指南料や違約金を支払った場合も、不法の原因は雇い主側にあるとして、違約金などの返還を認めている。 |
Author:民法マン
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