民法 条文 | 民法 解説 | |||||||||||||||||||
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第4編 親族 第4章 親権 第2節 親権の効力 |
親権者の権利などは以下の表を参照。
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第820条 【監護及び教育の権利義務】 親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。 |
親権者は、子の監護及び教育をする権利を有し、その義務を負う。 | |||||||||||||||||||
第821条 【居所の指定】 子は、親権を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければならない。 |
子は、親権者が指定した場所に、居所を決めなければならない。 親権者は、一般常識上妥当な範囲で、この生活の場を指定できる。子の監護や教育に不適当な場所を指定するのは、親権の乱用となり無効である。 子は居所の指定に従わなければならず、親権者は社会的に妥当とされる範囲で強制できる。だが、12歳程度の判断力をもつ子が、その自由意思で、離婚した両親のもう一方など、親権者でない者と居住しているような場合は、親権者においても自分との同居を強制する法的手段は無い。 |
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第822条 【懲戒】 ? 親権を行う者は、必要な範囲内で自らその子を懲戒し、又は家庭裁判所の許可を得て、これを懲戒場に入れることができる。 ? 子を懲戒場に入れる期間は、6箇月以下の範囲内で、家庭裁判所が定める。ただし、この期間は、親権を行う者の請求によって、いつでも短縮することができる。 |
? 親権者は、監護や教育のために、必要な範囲内でその子を懲戒し、または家庭裁判所の許可を得て懲戒場に入れることができる。 ? 子を懲戒場に入れる期間は、6ヶ月以下とし、家庭裁判所が決める。ただし、この期間は親権者の請求によりいつでも短縮できる。 懲戒は社会常識の範囲内で認められる。子に危害を加えるような場合は、違法であり、犯罪となる。 また、?の懲戒場にあたる設備は現在のところ存在しない。 |
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第823条 【職業の許可】 ? 子は、親権を行う者の許可を得なければ、職業を営むことができない。 ? 親権を行う者は、第6条第2項の場合には、前項の許可を取り消し、又はこれを制限することができる。 |
? 子は、親権者の許可がなければ、職業に従事することができない。 ? 親権者は、第6条第2項(営業を許可した未成年者に、とても営業はやっていけないという事情が出た場合)の場合には、?の職業の許可を取消し、または制限することができる。 親権者の許可とは、はっきり許可をしなくても、手伝ったり監督したりしている場合なら許可といえる。 |
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第824条 【財産の管理及び代表】 親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。 |
親権者は、子の財産を管理し、かつ、財産に関する法律行為について子に代わって行うことができる。ただし、その子の行動を束縛する契約をする場合には、本人の同意を得なければならない。 親権者の子に対する財産管理権は、子の財産を担保に入れたり、値上がりを見越して売却することなど、広範にわたる。 だが、子に一定の行動をとる義務を負う契約や、子が一定の行動をとることを禁止する契約などは親権者が単独で結ぶことはできず、子の同意が必要となる。また、労働基準法では、たとえ子が同意をしたとしても、親権者が代理して労働契約を結ぶことは絶対に禁止されている(もちろん賃金も親権者が受け取ることはできない)。 |
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第825条 【父母の一方が共同の名義でした行為の効力】 父母が共同して親権を行う場合において、父母の一方が、共同の名義で、子に代わって法律行為をし又は子がこれをすることに同意したときは、その行為は、他の一方の意思に反したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。 |
父母が共同親権者である場合、一方が共同の名義で、子に代わって取引を行い又は子が取引をするのに同意をしたときは、たとえもう一方の意思に反しているときであっても、有効となる。ただし、取引の相手が、取引がもう一方の意思に反していることを知っていた場合は別である。 | |||||||||||||||||||
第826条 【利益相反行為】 ? 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。 ? 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。 |
? 親権者である父または母とその子との利益が相反(対立)する行為については、親権者は、子を代理する特別代理人を選ぶことを家庭裁判所に請求しなければならない。 ? 親権者が数人の子に対して親権を行っている場合に、子の一人と他の子との間の利益が相反(対立)する行為については、親権者は、その一人を代理する特別代理人を選ぶことを家庭裁判所に請求しなければならない。 本条は、例えば、子が自分の財産を親権者に売るとか、親権者の借金の担保に入れるとか、子の利益を害するおそれのある行為をするについては、親権者は子の代理権を失い、特別代理人がこれに代わることとなる。 ?については、例えば、長男所有の家屋を次男に売り渡すといったような場合、長男か次男のために特別代理人を選ぶよう家庭裁判所に請求しなければならない。そして、特別代理人と親権者との取引となる。 |
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第827条 【財産の管理における注意義務】 親権を行う者は、自己のためにするのと同一の注意をもって、その管理権を行わなければならない。 |
親権者は、自分の財産を管理するのと同じ程度の注意で、子の財産を管理しなければならない。 本条がいう注意義務は、民法の中では最も軽い部類の注意義務であり、善管注意義務のような注意は必要でない。 もし、本条の注意義務を怠り、損害が出た場合、子に賠償をする必要がある。 |
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第828条 【財産の管理の計算】 子が成年に達したときは、親権を行った者は、遅滞なくその管理の計算をしなければならない。ただし、その子の養育及び財産の管理の費用は、その子の財産の収益と相殺したものとみなす。 |
子が20歳に達したときは、親権者は、遅滞なく子の財産管理の収支を明白にし、子の所有に属する財産を確定し、その結果を報告しなければならない。この場合、その子を養育し、財産管理のために親権者が支出した費用と、その子の財産から生じた親権者の収益とは、相殺したものとみなす。 子が20歳に達すると、親権は終了する。 20歳までにかかった養育費・財産管理費と子の財産からの収益は相殺されて差し引きゼロになるとするのが通説だが、もし財産からの収益の方が多いときは返してもらえるとする説もある。 |
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第829条 【財産の管理の計算の例外】 前条ただし書の規定は、無償で子に財産を与える第三者が反対の意思を表示したときは、その財産については、これを適用しない。 |
第828条但書の規定は、無償で子に財産を与える第三者が、養育費・財産管理費と子の財産からの収益の相殺について反対の意思を表示したときは、その財産について適用しない。 | |||||||||||||||||||
第830条 【第三者が無償で子に与えた財産の管理】 ? 無償で子に財産を与える第三者が、親権を行う父又は母にこれを管理させない意思を表示したときは、その財産は、父又は母の管理に属しないものとする。 ? 前項の財産につき父母が共に管理権を有しない場合において、第三者が管理者を指定しなかったときは、家庭裁判所は、子、その親族又は検察官の請求によって、その管理者を選任する。 ? 第三者が管理者を指定したときであっても、その管理者の権限が消滅し、又はこれを改任する必要がある場合において、第三者が更に管理者を指定しないときも、前項と同様とする。 ? 第27条から第29条までの規定は、前2項の場合について準用する。 |
? 無償で子に財産を与える第三者が、その財産を親権者である父または母に管理させないという意思表示をしたときは、その財産は父または母の管理に属さない。 ? ?の財産について、父も母も管理権をもたない場合において、第三者が財産管理者を指定しなかったときは、家庭裁判所は、子・子の親族・検察官の請求により、その管理者を選任する。 ? 第三者が管理者を指定したときでも、その管理者の権限が消滅し、またはこれを改任する必要がある場合に、第三者が別の財産管理者を指定しないときも、?と同じように管理者を選任する。 ? 第27条から第29条までの不在者の財産管理人についての規定は、?と?の場合について準用される。 |
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第831条 【委任の規定の準用】 第654条及び第655条の規定は、親権を行う者が子の財産を管理する場合及び前条の場合について準用する。 |
委任の終了後の処分と対抗要件について規定されている第654条と第655条の規定は、親権者が子の財産を管理する場合と第830条の場合について準用される。 | |||||||||||||||||||
第832条 【財産の管理について生じた親子間の債権の消滅時効】 ? 親権を行った者とその子との間に財産の管理について生じた債権は、その管理権が消滅した時から5年間これを行使しないときは、時効によって消滅する。 ? 子がまだ成年に達しない間に管理権が消滅した場合において子に法定代理人がないときは、前項の期間は、その子が成年に達し、又は後任の法定代理人が就職した時から起算する。 |
? 親権者とその子との間に、財産管理について発生した債権があるとき、その債権は、管理権が消滅した時から5年間行使しないと時効により消滅する。 ? 子がまだ20歳にならないうちに管理権が消滅した場合、その子に法定代理人がいないときは、?の期間は、その子が20歳に達するか又は後任の法定代理人が就任するかした時から起算する。 ?の財産管理について発生した債権とは、例えば、管理の失敗から発生した損害を子が親権者に賠償してもらう権利などのことである。通常の債権であれば10年で消滅時効だが、5年とされている。 また、子が婚姻をした場合は、成年擬制があるので、年齢が20歳未満でも?で処理される。 |
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第833条 【子に代わる親権の行使】 親権を行う者は、その親権に服する子に代わって親権を行う。 |
親権者は、その親権によって保護される子に代わって、子が持っている親権を行使する。 婚姻をしていない未成年の者が子を産んだ場合、生まれた子に対する親権は未成年の者の親が親権を代行することになる(親権代行者という)。未成年でも婚姻をしている場合は、民法上、成年擬制があるから別である。 |
Author:民法マン
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