民法 条文 | 民法 解説 | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
第5編 相続 第3章 相続の効力 第3節 遺産の分割 |
遺産分割とは、相続人が複数いる場合、財産がそれらの共有となっていたものを、各自に分配することである。方法としては、協議によるもの、家庭裁判所の審判によるもの、遺言によるものがある。 | ||||||||||
第906条 【遺産の分割の基準】 遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。 |
遺産分割は、遺産それぞれの種類・性質、相続人それぞれの年齢・職業・心身の状態・生活の状況、その他一切の事情を考慮して、しなければならない。 遺産分割されるのは、物や権利などのプラスの財産だけである。借金などのマイナスの財産は、相続開始の時から第900条や第901条で決まっている法定相続分の割合で自動的に分けられる。 |
||||||||||
第907条 【遺産の分割の協議又は審判等】 ? 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。 ? 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。 ? 前項の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。 |
? 共同相続人は、被相続人が分割を禁じた場合を除いて、いつでも、共同相続人同士の協議で、遺産分割をすることができる。 ? 遺産分割について、共同相続人同士での協議がうまくいかないときやできないときは、家庭裁判所に請求して、分割をしてもらうことができる。 ? 家庭裁判所は、?の請求において、特別の事由があるときは、期間を定めて、遺産の全部または一部の分割を禁止することができる。 遺産分割の方法には、次の表のようなものがある。
|
||||||||||
第908条 【遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止】 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。 |
被相続人は、遺言により、遺産分割の方法を決めたり、遺産分割の方法を決めることを相続人以外の第三者に委託することができる。また、相続開始の時から5年以内のある時期までは遺産分割を禁止することもできる。 | ||||||||||
第909条 【遺産の分割の効力】 遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。 |
遺産が分割されると、分割により各相続人個人のものになった個々の財産は、相続開始の時から相続人個人のものであったものとして取り扱われる。ただし、第三者の権利を害することはできない。 遺産が分割されるまでは、相続財産を相続人同士が共有している状態である。 例えば、土地と建物が相続財産であり、Aが土地を、Bが建物をもらうことになっていた場合、分割されるまではAもBも土地と建物に対してそれぞれ2分の1の権利を持っている状態である。もし、Bが土地の2分の1の権利を第三者のCに譲った場合、遺産分割が終わると、Cはまったく権利を持っていない者から譲り受けたことになるので、本条の但書がある。 |
||||||||||
第910条 【相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権】 相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続入が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。 |
相続が開始されてから認知され相続人となった者がいた場合、すでに他の共同相続人が遺産分割していたり遺産を処分していたときは、その相続人は自分の相続分に相当する金額の支払を請求できるだけである。 相続の開始後に認知されるケースとは、第787条による認知の訴えとか、第781条第2項の遺言による認知などがある。 相続開始後に認知されて相続人となった者も、当然、遺産分割に参加することはできるが、遺産分割が既にされていた場合は本条の規定の通りとなる。 |
||||||||||
第911条 【共同相続人間の担保責任】 各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う。 |
共同相続人はそれぞれ、他の共同相続人に対して、相続分に応じた担保責任を負う。 例えば、共同相続人ABCがいたとする。Aは土地をもらったが実際にそれは他人のものであり取り返されたとか、坪数が足りなかったとかいった場合、AはBとCに対して、損害の賠償を請求することができる。また、BとCは、土地をAに売った売主と同じように、Aに対して損失を分担しなければならない。 |
||||||||||
第912条 【遺産の分割によって受けた債権についての担保責任】 ? 各共同相続人は、その相続分に応じ、他の共同相続人が遺産の分割によって受けた債権について、その分割の時における債務者の資力を担保する。 ? 弁済期に至らない債権及び停止条件付きの債権については、各共同相続人は、弁済をすべき時における債務者の資力を担保する。 |
? 共同相続人はそれぞれ、自分の相続分に応じて、他の共同相続人が遺産分割によりもらった債権について、遺産分割時における債務者の資力を分担して担保する。 ? まだ弁済期が到来していない債権や停止条件付債権については、債権の支払時期が到来した時における債務者の資力を分担して担保する。 例えば、共同相続人ABCDがいたとする。遺産分割によりAは1000万円の債権をもらったとする。だが、その債権の債務者がAに対して600万円しか支払えなかった場合、BCDはAに対してそれぞれ100万円ずつ補償することとなる(ABCDの相続分は同じにしている。当然Aも100万円を分担する。)。 |
||||||||||
第913条 【資力のない共同相続人がある場合の担保責任の分担】 担保の責任を負う共同相続人中に償還をする資力のない者があるときは、その償還することができない部分は、求償者及び他の資力のある者が、それぞれその相続分に応じて分担する。ただし、求償者に過失があるときは、他の共同相続人に対して分担を請求することができない。 |
第911条と第912条において、担保責任を負う共同相続人のうち、資力不足のため支払をすることができない者がいるときは、その支払ができない部分について残りの共同相続人がそれぞれの相続分に応じて分担する。ただし、支払を求める者に過失があったときは、その者が負担しなければならない。 例えば、共同相続人ABCDがいたとする。遺産分割によりAは1000万円の債権をもらったとする。だが、その債権の債務者がAに対して600万円しか支払えなかった場合、BCDはAに対してそれぞれ100万円ずつ補償することとなる(ABCDの相続分は同じにしている。当然Aも100万円を分担する。)。この場合において、Bが100万円のうち70万円しか支払う余力がなかったとき、CDはそれぞれ10万円ずつをAに支払う必要がある(Aも10万円分担する)。もし、AがBに対して早く支払を求めていれば支払を受けることができていた場合、Aには過失があるので残りの30万円は全てAが負担しなければならない。 |
||||||||||
第914条 【遺言による担保責任の定め】 前3条の規定は、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、適用しない。 |
第911条、第912条、第913条の規定は、被相続人が遺言で特別の意思表示をしていた場合は、その遺言に従う。 |
Author:民法マン
秩序のない現代にドロップキック!
RSSリーダーに下の文字をドラッグすると簡単に登録できます。